
Web制作や運用の現場では、案件や成果物のデータ、顧客情報、運用レポートなど、さまざまな「データ」を日々扱います。これらを適切に管理できていないと、探し物に時間を浪費したり、最新のファイルがわからずミスにつながったりと、大きなリスクになります。本記事では、初心者〜中級のWeb制作者の方に向けて、データ管理の基本的な考え方と、すぐに実践できる効率化のポイントをお伝えします。
目次
データ管理が重要な理由
データ管理は単なる「整理整頓」ではありません。以下のような目的があります。
- 業務効率化
必要なデータがすぐに見つかる環境は、作業時間の短縮につながります。 - 品質維持
最新かつ正しいデータを使うことで、納品ミスや事故を防ぎます。 - チーム共有
フォルダ構成や命名ルールが統一されていると、他のメンバーやクライアントとの連携がスムーズになります。 - 情報セキュリティ
誰が、どのようにアクセスできるかを管理することで、情報漏えいのリスクを減らします。
データ管理の基本「まずは整理から」
フォルダ構成を決める
クライアントごとにフォルダを作り、その中に「デザイン」「コーディング」「納品」などのサブフォルダを設けるのが基本です。複数人で作業する場合は、必ずルールをドキュメント化しましょう。
clientA
├── project-202507
│ ├── design
│ │ ├── psd
│ │ └── assets
│ ├── website
│ │ ├── html
│ │ └── css_js
│ └── delivery
│ └── final
- clientA:クライアントごとのフォルダ
- project-202507:案件ごとのフォルダ(案件名や納期年月を入れると便利)
- design / coding / delivery:サブフォルダで役割を明確化
- さらに必要なら「docs(仕様書)」や「backup」フォルダを追加してもOKです。
ファイル命名ルールを統一
ファイル名がバラバラだと、どれが最新かわかりにくくなります。
命名ルールを決めておくことで、誰が見ても一目で状況がわかるようになります。
特におすすめなのが、年・月・日をファイル名の先頭に入れる方法です。PCのフォルダ上でソートしたときに時系列順に並ぶので便利です。
202507_HP_top_v1.psd
202507_HP_top_v2.psd
このようにすると、更新履歴が視覚的にわかりやすく、古いデータを誤って使うリスクも減ります。
命名ルールには以下の要素を組み込むのが基本です。
✅ 日付(YYYYMMDD)
✅ クライアント名または案件名
✅ ページやパーツ名
✅ バージョン番号(v1、v2…)
3. バージョン管理
GoogleドライブやDropboxなどのクラウドサービスを利用すると、履歴管理が自動でされるので安心です。Gitなどのバージョン管理ツールも便利ですが、使い慣れるまではクラウドストレージから始めてもOKです。
効率化のコツ:現場で使えるテクニック
1. 定期的な「整理の日」を設ける
忙しいと整理は後回しになりがち。週に1回、作業が少ない日を決めて整理するとリセットしやすいです。
2. タグやカラーラベルを活用
MacやGoogleドライブなら、タグや色ラベルで「進行中」「要確認」などをつけられます。視覚的に状態がわかるので便利です。
3. セキュリティにも配慮する
クライアントから受け取った重要な情報は、パスワード付きフォルダやアクセス制限をかけて管理します。共有リンクの有効期限設定も活用しましょう。
4. バックアップは必ず取る
外付けHDDやクラウドなど、複数の場所にバックアップを用意します。自動化ツールを使うと手間が省けます。
保存先について
Web制作を始めたばかりだと、なかなか周辺機器にお金をかけるのは難しいと思います。
ですが、大切なデータをPC本体だけに保存するのはおすすめできません。
理由は大きく3つあります。
1. 突然の故障に弱い
PCは精密機器なので、突然動かなくなったり、ストレージが壊れてデータが消えてしまうリスクがあります。
特にノートPCの場合は衝撃にも弱いです。
2. 容量がすぐにいっぱいになる
制作データは画像や動画が多く、容量を圧迫しやすいです。
PCの動作も重くなりがち。
3. バックアップが取れない
1台だけにしかデータがないと、消えたときに取り戻せません。
複数の保存先にバックアップするのが基本です。
おすすめは「簡易RAID機能付き外付けHDD」
最近は、2台のHDDに同時に書き込みをして片方が壊れてももう片方が残る「ミラーリング(RAID1)」という機能が付いた外付けHDDが、2〜3万円程度で手に入ります。
これならPC本体よりも安全にデータを保管できますし、容量も大きいので安心です。
クラウド(GoogleドライブやDropboxなど)との併用も効果的です。
こんな製品がおすすめ

UGREEN NASync DXP2800 / 55,880円
- UGREEN NASyncは、外付けHDDより一歩上の「NAS(ネットワークストレージ)」です。
- ネットワークにつなぐので、PCがなくてもスマホや別のPCからアクセスできます。
- RAID設定は初回セットアップ時に簡単に選べます。

I・O DATA HDL2-AAXシリーズ / 36,630円(2TB)
出荷時はRAID 1に設定されているので、初心者の方も安心して使えます。
PCやスマホからネットワーク経由でアクセスでき、バックアップやデータ共有に便利です。

NIMBUSTOR 4 Gen2 AS5404T / 75,800円
- 小規模〜中規模オフィス、本格運用したいフリーランスにおすすめ。
- RAID 5/6 に対応しているので、2ベイではできない構成も可能。
- コストはやや高めだが、信頼性・性能重視の方に向いています。
番外編:PCやサーバーを使ったファイルサーバー構築も可能
市販のNASやRAID対応外付けHDD以外にも、WindowsやLinux OSを搭載したファイルサーバーを自分で用意する方法もあります。
✅ Windowsサーバー
余っているPCや小型のサーバー機にWindowsをインストールし、共有フォルダを設定するだけでも簡易的なファイルサーバーになります。
小規模なチームや自宅用なら十分運用可能です。
✅ Linuxサーバー
Linuxで構築すると、SambaやNFSといった仕組みでファイル共有ができます。コストが低く、カスタマイズ性が高いのが魅力です。少し知識は必要ですが、勉強にもなります。
✅ Macユーザーなら「Mac mini」で
Macユーザーなら、低価格で高性能なMac miniをファイルサーバー化するのもおすすめです。
Time Machineのバックアップ先や、AFP/SMBサーバーとして運用可能で、静音性も高くデザインも良いので、オフィスや自宅に置きやすいのがメリットです。
こうした「自分で組むファイルサーバー」は、NASに比べて自由度が高い反面、設定やメンテナンスが必要になるので、初心者の方はNASから始めて、余裕が出てきたら挑戦してみるのが良いでしょう。
まとめ
データ管理は「仕事の質」を上げるための大切なスキルです。少しの手間でミスや探し物の時間が激減し、クライアントからの信頼にもつながります。まずは「フォルダ構成と命名ルールを決める」ところから始めてみてください。
もし「うちのチームに合ったルールを一緒に考えてほしい」「おすすめのツールが知りたい」という場合は、メンサポにぜひご相談ください!現場経験豊富なプロが、あなたの状況に合ったアドバイスをします。